"My Life and The Paradise Garage : Keep On Dancin'" Mel Cheren
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いきなり表紙が最強ですが、West End Recordsのオーナーであり、Michael Browdyと共にディスコ「パラダイス・ガラージ」の設立者でもあった、Mel Cheren氏がタイトル通り、自らの半生とパラダイス・ガラージを包み隠さず語った一冊。
この本が優れている点は、パラダイス・ガラージをはじめディスコカルチャーが隆盛を極めた時代の真っ只中にいた人物が語る、だけでなくその語り口が非常にパーソナルなこと。それがどれくらい赤裸々かというのは本編後にある「dedicated in loving memory」という項を見るとよく分かります。ここでは200人近くの友人・知人の名前が実名で挙げられ、それぞれ数行に渡ってその人物に渡る思い出が書かれているのだけど、名前の横に「*」マークが付いてる人が全体の5分の1くらいいて何だろうなーと思っているとそのリストの最後に「* sex partner.」との表記が。そういう赤裸々さは勿論本編でも貫かれていて、自分が誰と恋人関係にあったのか、またドラッグやAIDSの問題も含めてどんな風に人間関係がボロボロになっていったのかまで、「そこまで書かなくていいよ」と突っ込みたくなる克明さで描かれています。そしてその赤裸々さによって、読者はMel Cheren氏の目を通して、ディスコ及びパラダイス・ガラージの時代=ゲイに厳しかった世間の中で自分たちのユートピアであるディスコをつくりあげ、その全盛期を謳歌し、やがてパラダイス・ガラージが閉店し、看板DJであるラリー・レヴァンが誰にも看取られることなくたった一人で病院で亡くなるまで、を立体的にまざまざと感じることが可能になっています。
そしてこの本が素晴らしい点のもう一つは、その包み隠さず語られるMel Cheren氏の人生のいろいろな局面で、ダンスフロアーでかかる曲がどんな風に彼の気持ちに作用したのか、ということがとても魅力的に書かれているところです。Mel Cheren氏に限らずダンスフロアーにいる多くの人たちが、ひとつの曲やその歌詞に、自分たちの気持ちを切実に投影し、またDJであるラリー・レヴァンもかけるレコードにそのときどきの自分のメッセージを託していることがよく分かります。例えばパラダイス・ガラージ閉店の夜に、すべてのライトが消されMel氏にスポットライトが当たり、ラリーがThe Trammps「Where Do We Go From Here?」をプレイする、という場面はこの本のクライマックスのひとつでもあります。
それだけに留まらず、レコードをノンストップでかける手法、またはある曲のロング・バージョンである12inchシングルといったものが初めて発明された過程なども描かれている点でDJカルチャーの歴史を知ることもできるし、ひとりのゲイの視点から見た70~80年代のアメリカン・ゲイ・カルチャーの物語として読むこともできるし、ダンス・ミュージック・ファンにとってはこんなにイイ本はなかなかないと思います。現時点では洋書でしか手に入りませんが、語り口調を起こしたものなのでそんなに難しい英語は出てこないし読み易い本です。興味を持った方には是非ご一読してもらえたらと思います。

